やや赤みのある深い茶色、顔彩で言えば「煤竹」か。
油絵を描いた経験のある人は、その色の魅力を知っている。
高校生の頃、美術クラブに入っていた私は、学生展(県内高校生美術展)に自画像(油絵)を出品したことがある。
その時描いた髪の色の基本色として使ったのが、バーアンバー。
作品は実物より美人だったせいで、あの高校にこんな子いたか?と話題になった。
F20号(72.8×60.6)だったように記憶している。
あの時代は美しい絵がはやらなかった。
整った絵しか描けなかった私は、美術の先生から高評価をもらうことはなく、部長になっても美術の成績は中程度以上にはならなかった。
久し振りで美容院で髪を染めてもらった。
どんな色がお好みですかと問われ、バーントアンバーと答えると、店主はスマホを持ってきた。
「も1回言ってもらえますか?」
画面に現われた色はやや暗かった。
それを見て私は、
「赤みがかった茶色にして下さい」
と言いなおした。
花屋でヒマワリを買ってきた。
テーブルに活けてあらためてじっと見る。
ヒマワリの花芯は、私の記憶の中のバーントアンバーそのものであった。
件の絵は、行方不明になって久しい。
私は故郷をすてたヒトなので、今さら解明しようとは考えてもいないが、時折ふっと思うことがある。
あの美少女はどこへ行ってしまったのだろうかと。
(玉麗)