実家にりっぱなキンモクセイがあった。背はあまり高くないが幹が太く、この時期それはそれは美しい黄金色(こがねいろ)の花をつける。
その様はまさに“びっしり”と表現するより他ないほどであった。香りは塀を越えてあたり一面に漂い、秋を満喫させてくれた。残念ながら家を新築する折に切ったらしい。
亡くなった父は盆栽が趣味であった。敷地には盆栽を置く棚が所狭しと並べられ、その他にもいろいろな植物が植えられていた。キンモクセイもそのひとつだった。
母が亡くなり、父が逝って久しい。
モクセイの香る季節、昨日兄が旅立った。
(玉麗)