アテンボウ君、力持ち

蒸し暑い室内の空気を瞬く間にカラッと変え、涼風を送ってくれるエアコン。

日本の夏はこの文明の機器なくして過ごすことは出来なくなった。

そのエアコン様が吸い上げた湿気は、水分となってドレンを流れ外に出ているはずなのに、バシャッバシャッと床に飛び散った。

下にはコンセントがある。

私は慌ててその辺にあったタオルで保護し、もう1枚雑巾を取ってきて水を押さえた。

原因は排水ドレンに傾斜がついていないこと。

今までもたまにこのようなことがあったが、ちゃんと対応してこなかった。
元の工事が悪かった。

もうアカンとなって電気店に電話し、工事をしてもらうことになった。

 

エアコンを壁から外し、少し高い位置にズラして取り付け直す。

工事の職人さんは2人来た。

2人でエアコンを外し、助手の若手が肩にかつぐ。

責任者がドリルを使い、その間助手はしっかり機械を持っている。

2人とも脚立に上がっての作業であるから、見ている私はハラハラする。

「アテンボウ君、大丈夫か?もうちょっと頑張ってな」と責任者。

アテンボウ君と呼ばれた若手は「大丈夫です」と言っている。

けど、エアコンが少し傾いてきた。

 

「重たいだろうナ、落とさんといてくれよ」
これは私の心の声。

「何キロあるんだろう。頑張ってや、脚立から落ちるなよ」
これも心の中。

手に汗握るとはこのことナリ。

脇の下にビッショリ汗をかいた私。

 

「ヨシッ 終わった、取り付けるよ」

あ〜ヤレヤレ、よう頑張ってくれた。

 

阿天坊君、なんと珍しい名前。

愛嬌顔の彼は、
「坊がつく名前って、昔はお公家さんかもしれないよ」
と言う私に、
「これからは誇りを持って生きてゆきます」
と言って、ニコッと笑った。

 

エアコンはちゃんと水分を排出するようになった。

外の工事で外機の高低差が変わったせいもある。

(玉麗)

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