私の知人で、人にものをあげるのが好きな人がいた。
その人はお金持ちだったので、けっこう高価なプレゼントをしてくれる。
例えばどこそこの有名な店のたけのこの佃煮、当時はお取り寄せをしていなかったのかどうか、その店まで出かけてたくさん買って、お稽古事の仲間に配る。
私にも当然どうぞ、と言ってくれる。
コレって高いものですよね、と当時の私は恐縮して隣の人に聞いた。
その人はニコッと笑って、「いいのいいの、彼女お金持ちだからありがたくもらっといて」と言う。
その時は、いいのかな、お返しとかしなくてもと気を遣ったものだ。
私はまだ若く修行中の身で、サイフの中身は常に軽かった。
それから30年以上経って、私もようやく小遣いでプレゼントができるようになった。
そしてプレゼントをする喜びを知ってしまった。
そこで気付いたのだが、私もやはり、“あげたがり”の人であったと。
お金持ちでもケチな人はいっぱいいる。
そんな人達は、人にものをあげるなんて思いもよらないことなのだ。
道行く人が2人喋っていた。
「・・・・をくれるンだったらナア」
「そうや、何もくれへんのに・・・損するワ」
聞こえないところがあったので、何を言っているのかよくはわからなかったが、「何かをもらわなきゃ、タダで何かをするのはイヤだ」と言っているようであった。
もらうことは大好きだけど、何かをして「あげる」ことの出来ない人達。
懐具合の問題だけではないような・・・・・。
世の中は回っている。
回り回って何がやってくるかはわからない。
良いことをしておけば、回り回っているか返ってくる、とよく言われるが間違いではないと思う。
何かを「あげて」いるから、そのうち何かをもらうようになるのだ。
人付き合いのない人は、あげなくてもよいかもしれないが、そんな人には、もらう機会もやって来ないだろう。
あげるものは物だけとは限らない。
思いやりや、奉仕の心も含まれる。
(玉麗)