12年越し

先日、買い物の帰りにフト見ると、お店に灯りがついていました。

何?!

私は灯りに吸い寄せられるように足早に歩いて行きました。

近づいて見ると、確かに開店しています。

こ、これは・・・夢ではないか?

受付窓があり、「席を外していますのでご用の方はベルを鳴らしてください」と小さな書き置きが。

人がいるのか・・・?

いや、いない。

今はいない。

いないのをいいことに、キョロキョロと店内を観察します。

くるっと回って入り口の扉も確認。

 

そうやって店の前をウロウロしていると、「いらっしゃいませ」と女性が店内に現れました。

どこから現れた?!

意表をつかれましたが、落ち着いて、少なめメニューの中からビスキュイを注文しました。

目の前のガラス瓶の中に現物があったからです。

4種類の味を、2本ずつください。

支払いがどんぐりや木の実であったなら私は狂喜したでしょうが、普通に電子マネーが使えました。

包みを受け取ってもと来た道に戻ります。

8本のビスキュイのうち、1本をガサガサと取り出し、かじります。

かたい!

そして美味しい。

私好みの食感と素朴な味わいです。

ボロボロと粉を落としつつ、食べ歩きをしながら「こんな形で出会うなんて」と感慨にふけっていました。

 

さて、私が訪れた店は、小さなコーヒーショップです。

タイトルの12年越しという言葉の通り、長年その前を通る機会はあったものの、お店は常に閉まっており、開店しているところをその日初めて見たのです。

12年、というのは大雑把な年数です。

「こんなお店ができたのだな」と私が知ってからのことなので実際はもっと古いお店なのかもしれません。

高校生の頃、英語の授業でやったオー・ヘンリの「20年後」という短編小説をふと思い出しました。

内容は忘れました。

 

ともかく、長い年月を経て私はそのお店で買い物をすることができたのです。

なぜ、何度も通りかかる機会があったのにもかかわらず、店は常に閉まっていたのか・・・

開店休業という場合もあります。

いつしか私は、その店舗はすでに閉店して次の借り手がおらず、以前のカフェの看板やらがそのまま残っているのだ・・と思うようになっていました。

しかし、その謎は解けました。

週末の限られた時間のみ開店するお店だったのです。

それは扉にも記述してあり、私が見過ごしていただけでした。

 

こういうのをご縁というのかもしれません。

開店時間にたまたま通りかかっただけで、買い物できた人もいるでしょう。

一方私は。

12年越しか・・・・・・・白いヒゲが生えたような気分になりました。

(雪)

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