嫁入り

嫁に行かせる日が近づいている。娘のことではない。

いや、娘のことだ。鳥の女王『鳳凰の図』。

近日中に、毎年干支のお軸を注文して下さる所へ持っていく。今年の絵をことのほか楽しみに待っていて下さると聞いている。

血圧が高くなるほど頑張って描いたこの絵(目の前に掛けている)。依頼主のY家の奥方がトリ年生まれと聞いた時、お姫さまのような鳥を描いて喜んで頂ければ・・・と考えた。

描き終えた私はフラフラになっていたが、達成感で満ち足りていた。

そして一週間後、もう一枚の鳳凰を描いた。その絵は原図とは色違いで研究会の手本となった。妹のような存在だ。

絵とは私にとって子供のようなもの。特に体を壊す寸前まで根をつめた絵には特別の思いがこもる。と言っても、絵を描くことが仕事。手許に残しては完全に事を成したことにはならない。

Y家で称賛される子になりますように、もう二日ほどここに飾っておきたいけれど、きっぱりと箱に納めた。

(玉麗)

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