かつての書道仲間に、鋼(はがね)のような体をしている人がいた。
女性である。
しかも小柄で細い。
キンニクマンショーに出ているようなムキムキの筋肉ではなく、骨にうっすらと肉がついているだけ。
脂肪が全くない状態、マラソンの選手のような体型であった。
彼女の家に招待されたことがあって、そのヒミツが解明された。
フローリングの床がピカピカ。
部屋はキチンと整頓されて、モデルルームのようであった。
毎日床を雑巾で拭くのだという。
モップではなく雑巾で水拭きする。
彼女の体はその作業で作られたものであった。
その頃、私も床を拭いていた。
しかし、彼女のように毎日ではない。
やがてモップに替わった。
ずいぶん楽になった。
時は移り、世の中は変わり、私の家から教室が消えた。
そうなると、かつてのように目の色変えて掃除する必要がなくなってきた。
年だから、シンドイからと、サボるようになった私の体は、おなかプックリのみっともない姿に変身してしまった。
もう今さら何をしても遅いことは、重々承知している。
しかし体を動かさなければ、夜の睡眠がおぼつかない。
さりとて、ジム通いする熱心さはかけらもなく、3日でプールは卒業し、ジムに至っては1日でやめた。
夜寝る前に15〜20分、部屋を歩いてはいる。
徘徊と言われながらも、唯一体を動かすアクションである。
昨日から床を拭くことにした。
Kさんの鋼の体には遠く及ばないものの、1ツだけ見える効果がある。
床がスベスベして快適である。
これだけで満足しようと思いつつ、本日2日目終了。
ベランダも、拭けばけっこう広い。
重労働である。
3分の1ほど残して「また明日に」とサボることにしよう。
(玉麗)