カネタタキ

リッリッリッ、私の耳には何度聞いてもこう響く。けれどもカネタタキはチッチッチッと鳴くと、図鑑には書かれている。パソコンで見せてもらう。娘に尋ねるとやはりチッチッチッだと言う。そう言われてみるとチッチッチッであるような・・・・・。

わが家には小さな窓がひとつある。外に向かって尖って出っ張っているから、通常掃除は不可能だ。その窓の外側のヘリをトコトコと何かが動いた。普通ならとても私の目には見えないが、夜のことで、街灯で明るく室内が暗かった。つまりシルエットとして(たぶん2センチくらいの)虫が移動しているのが見えたのだ。

その前に、リッリッリッと聞こえたので、どこで鳴いているのか知りたさに、外へ出たりベランダに近づいたりしていた。虫は人の気配を感じるとピタッと音を止める。何度もそのあたりをウロウロしている途中、ふと窓に目が行って、かの虫の動きを捉えることが出来たという訳だ。

そうっと近寄ってのぞいてみたが、どこにもいない。外は壁で垂直面、窓枠のほんの少しの所を歩いていた虫は、私が近づいたのを察知して、ひょっとしたら落下したのかもしれない。あーあ、窓にたどり着くまで大変だったろうに、ゴメンネ。

私は掃除を決行した。夜8時にこんなことをするなんてと思いながらも、せっかく訪なってくれたカネタタキへのお詫びの意味を込めて。

秋の虫の音の中で、リッリッリッが一番好きである。

(玉麗)

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